「どうせ変わらない」は囚われているだけ!『会社を変える「組織開発」』で学んだこと

組織開発

今年の探究テーマにしている「組織開発」に関する本を読みました。学習する組織やU理論などを背景にしつつ納得感高くまとまった学びの多い本でした。忘れずに仕事に生かせるようポイントをメモ。

『会社を変える「組織開発」』という本

『「どうせ変わらない」と多くの社員があきらめている 会社を変える「組織開発」』という本を読みました。タイトルながいー。笑

著者は組織開発ファシリテーターの森田英一さん。アクセンチュアなどで人と組織のコンサルティングに関わり、独立後、人材開発等に携わり、日本の人事部(後援:厚生労働省)主催のHRアワード2013年には教育・研修部門で最優秀賞を受賞していたりするすごい人です。

ここ最近読んだ本の中では、気づきも多かったですし、考えていたことの整理に大きくつながったので、忘れないようにポイントをメモしておこうと思います。

「どうせ変わらない」と多くの社員があきらめている 会社を変える「組織開発」 PHPビジネス新書
B018RZFQMG

買おうと思ったキッカケ

本屋で物色していたときに、コレ買おう!と思ったきかっけは、プロローグ(まえがき)の文章の一部です。よくある「こんな悩みをもっている人いませんか?」的な文章がピタリと現在の状況に当てはまっていて興味を惹かれました。

例えば、

「実は、このサービス本当にお客さんのためになっているのかな?と疑問を感じている。でも、そういう根本的なことを考え始めると、いくら時間があっても足りないので、あまり考えないようにしている。」

本当は、他部署と連携して新しいビジネスのやり方を探った方がいいと思う。でも、他部署との調整はいろいろ大変そうだし時間もかかるから、今までのやり方で続けるしかない」

などです。

もっと善い会社にしていくためにも、この辺りはなんとかしたいな―と思っていたことなので、何か解決に向けてのヒントが得られるといいなと思って購入しました。

『会社を変える「組織開発」』のポイント

個人的に新しい知識/考え方を得られたり、頭の整理になったポイントをメモしておきます。

この本の内容は、ピーター・M・センゲ博士の『学習する組織』とC・オットー・シャーマー博士の『U理論』をベースになっていました。個人的にどちらも学んだことがあり興味領域だったのでよけい学びが深かったのかもしれないと思いましたね。

また、章立てのテーマにもなっていた、部分最適と短期最適に囚われているという言葉も印象的でした。囚われはほんと良くないですね。

20世紀型工業化マネジメントの限界

こういう話はどこでも言われていますが、うまく整理されていたのでメモしておきます。

センゲ博士によると、「評価によるマネジメント」が「短期的な指標」に焦点を当てることになり、また、目に見えないものを低く評価する風潮につながり、今日の組織に限界を生んでいるそうです。

大事なことのうち測ることができるのは3%しかないらしいですよ。

そんな工業化マネジメントの特徴として、以下のようなものがあるそうです。

  1. 追従を基盤にした文化(上司を喜ばせることで出世する)
  2. 結果の管理(経営が目標設定、社員は目標達成責任)
  3. 「正しい答え」vs「間違った答え/誤った答え」(何が正しいかが優先)
  4. 画一性を重視
  5. 予測とコントロールが可能であるということ(という勘違い)
  6. マネジメントとはコントロールすること
  7. 三種の神器は、計画、組織化、コントロール
  8. 過剰な競争と不信
  9. 全体性の喪失(局所的なイノベーションがあっても広がらない)

要約すると、「分けてコントロールしてきた」ということだそうです。なるほどなーと思いました。

部分最適の時代は終わったんじゃないですか?ということでしょうか。

このようなやり方は、プロダクト・ライフサイクルでいうとシンプルに良いものを生産性高く作って売ればよかった高度経済成長の時代に適していた方法であり、複雑で不明瞭な現代には効果が出しにくいということはよく言われていますよね。

このような社会的背景をふまえ、本では組織の中にある「思い込み」や「罠」の正体とその解決方法について述べられています。

上司は知らず知らずのうちに

これは気をつけなきゃと思わせてくれた内容でした。

上司は知らず知らずのうちに、自分がダメだと思っている部下に「ダメダメビーム」を出しているもの」だそうです。

話しかけるのは評価している社員ばかり(意識しているわけでなくても)で、そうじゃない部下はモチベーションを下げているよ、つまり、部下が役に立たないという片棒を上司であるあなたが担いでいるんですよという話でした。まずはその事実を認識しようということです。

「リーダーが抱える20の悪い癖」というものも載っていました。そのうち「私はこうなんだと言い過ぎる」や「善し悪しの判断をくだす」などは意識しておこうと思います。

あと面白かったのは、「学習する組織」のシステム思考という考え方をつかった「お前には10年早いループ」です。

文章だとかなり表現しづらいですが、、、

部下が育たない(上司)

もっと高い視点で仕事しろ(上司)

勇気を持って問題意識を言う(部下)

解決策は?(上司)

答えられない(部下)

10年早いわ!(上司)

言って損した感(部下)

目の前のことに集中(部下)

部下が育たない(上司)

といったループのことです。

複雑に絡みあうものごとの関係性をループ図で表現することで、背景にある囚われ(メンタルモデル)を見ることができます。

参考:システム思考 – The Fifth Discipline – 学習する組織の5つのディスプリン

ちなみに、上記のループからわかるメンタルモデルには、問題意識を言うときは解決策も言うべきというものがあります。このメンタルモデルは確かに自分の中にもあったので、客観的に認識できて良かったです。

他にも本の中には、「やったもん負けループ」や「属人化で成長が止まるループ」などもありました。

短期最適に囚われている

多くの日本企業が目指している、年々成長し、規模拡大をしていかなければならないというのは、本当にそうなのですか?という問題提起がなされていました。

P・F・ドラッカーも「組織の最大化を目指すのではなく、最適な規模を目指せ」と言ってますよと。

そうするべきでない理由をデータをもとに、いろんな観点から述べられています。株式市場の仕組み、役員任期の短さや「マネジャーが短期成果に追われ続けるループ」などが悪循環を引き起こしているという話でした。

また、部分最適や単位最適の罠にハマったまま、目の前のことをまじめにコツコツ一生懸命がんばっているのが日本企業/日本人であり、そのことが問題をさらに大きくしているという主張もありました。

要は、「うすうす感じている違和感に蓋をして、まじめにコツコツ、みんなで会社を沈めている」という状況です。この言葉は納得感があるなーと思いました。心に刺さりましたね。

国民幸福度ランキング

2006年にイギリスの心理学者エードリアン・ホワイトさんが178カ国で調査した「国民幸福度ランキング」というものがあるそうです。

第1位はデンマーク。上位は中・北欧諸国です。日本はなんと90位……。

同様のアメリカの調査(「今、幸せですか?」などのアンケート)でも、デンマークは1位だったそうです。

筆者がデンマークにこの原因を調べに行ったとき、デンマークと日本の差として気づいたキーワードは「当事者意識」だったというのがすごく納得感がありました。

会社とは自分が良くしていくもの、過程とは自分たちの力でつくりあげていくもの、人生とは、自分自身で描いていくもの、と考えることが重要で、そのためにも今起こっている現実やこれからの未来から逃げずに、直視することから始めましょういうことです。

では、どうやって変えていくのか

日本企業が悪循環にハマっている理由を述べた後、もちろんですが(笑)、どうすれば改善していけるかについて書かれてありました。

この辺はU理論の考え方が使われていた印象があります。

要約すると、

  1. センサーを高め、気づくこと
  2. 質の高い対話
  3. 俯瞰

が大事です。

すごいリーダーが必要なわけではなく、組織の体質悪化の原因は「コミュニケーション不全」であるとのことでした。

そして、そのコミュニケーション不全が引き起こす「学習障害」と、そのことにより組織が「機能不全」になることが、まじめにコツコツ会社を沈めることにつながるということです。

ダニエル・キム教授も言っているように「関係の質」が大事だってことですね。激しく同意です。

参考:必修!ダニエル・キム(MIT教授)の「組織の成功循環モデル」まとめ

センサー機能を高め、気づくこと

まずは、違和感を話せる安全な場を作ることがポイントで、「問題意識を言うときは、解決策も言うべきだ」という考え方(=囚われ)を手放すことが大事です。

質の高い対話と俯瞰

カンバセーション(会話・雑談)でもディスカッション(議論・討議)でもなく、ダイアログ(対話)をしましょうと筆者は勧めていました。

ダイアログを行うためには、内省や、自らの組織を越境した学習機会(ラーニングジャーニー)を重ねながら、できれば合宿形式で深いテーマの話に入っていくことが望ましいそうです。

対話の場をつくるときの9つのポイントがまとまっていたのでメモ。

  1. 「考えていること」だけでなく、「今、感じていること」を話す
  2. 参加者全員が話す
  3. 会社の縮図となる人々を集める
  4. 評価や判断をいったん手放して、聴く
  5. 恐れを乗り越えて、タブーを超える
  6. ムズムズ、モヤモヤを奨励する
  7. 沈黙の時間を活用する(葛藤や衝突が起こったら一人の時間をとるのもよい)
  8. 自分自身や自分たちのチームを見つめなおす
  9. 環境を整える(会場、音楽、飲み物や軽食など)

また、本の最後(第9章)には、実際の事例をもとに創られた物語を通して組織開発が組織を変えていくプロセスを理解できるように書かれていてすごく分かりやすかったです。ストーリーにすると理解が進みますね、やっぱり。

どうやって自社にも取り入れていくか、アウトプットの方法を考え、組織開発につなげていきたいと思える良い本でした。

「どうせ変わらない」と多くの社員があきらめている 会社を変える「組織開発」 PHPビジネス新書
B018RZFQMG

では、また!

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