ASTD(ATD)カンファレンス2014から学んだこと(VUCA、70:20:10フレームワークなど)

人材開発

2014年のASTD国際大会のレポートを改めて読みなおして、世界の人材開発の潮流を学んだのでメモ。学習の科学、70:20:10フレームワーク、リーダーシップとフィードバックなど、潮流を読み解くキーワードが沢山ありました。

※ASTDとは、American Society for Training & Development(米国人材開発機構)のことです。この2014年の大会にて名称変更を宣言し、ATD(Association for Talent Development:タレント開発協会)になっています。

「学習の科学(The Science of Learning)」の追加

2014年から学習セッションのカテゴリーとして増えたのは、「学習の科学」です。

これは「学習の神経科学(The Neuroscience of Learning)」、「神経科学を通じたパフォーマンスマネジメント変革(Transform Performance Management Through Neuroscience)」や「脳を意識したコーチング(Coaching With the Brain in Mind)」など、神経科学を学習と連動させる取り組みや研究の分野を指します。

脳機能の画像化技術(fMRIなど)の発達により、人の思考・記憶・学習などについて色々と分析できるようになり、効果的な学習デザインやコーチング等に活かすことができるようになってきているということですね。

学習プロセスの設計の提案の際に、脳科学・神経科学的なアプローチを根拠として用いることも個人的に多いような気がします。

VUCAという時代背景

また、2014年のASTDでは、VUCAというキーワードが頻発していたようです。「次世代のリーダーに必要な能力2つ「リーダーシップ成熟度」と「学習機敏性」(コーン・フェリー調べ)」でも書きましたが、VUCAとは、

  • Volatility(変動性:変化の性質、量、スピード、大きさが予測不能のパターンをもつこと)
  • Uncertainty(不確実性:問題や出来事の予測がつかないこと)
  • Complexity(複雑性:多数の理解困難な原因、抑制因子が絡み合っていること)
  • Ambiguity(曖昧性:出来事の因果関係がまったく不明瞭で前例もないこと)

の頭文字をとった言葉で、変化が激しく予測不可能な今の時代を表すキーワードだと言われています。

VUCAな時代に必要な○○とは?という問いが沢山起こっているんでしょうね。例えば、VUCAにおけるリーダーシップとは?とか、学習デザインとは?とか、成功の定義とは?とか。

そして、VUCAの時代を乗り越えるためには以下の3点に注意すべし!という提言もありました。

  1. 「予測できるという傲慢さ(Predictive Hubris)」を捨てること
  2. 「有機的な適応(Organically Adaptation)」を意識すること
  3. 「共有化された意識と権限委譲による実行(Shared consciousness & Empowered Execution)」を促すこと

つまり、今までの経験による固定概念を捨て、シェアによるオープンイノベーションが必要だということでしょうかね。

70:20:10フレームワークとカークパトリック・モデル

これは有名な人の学習機会についてのフレームワークと、学習効果測定のモデルの話ですが、VUCAな時代において、この観点が改めて注目されているようです。

70:20:10フレームワークとは

  1. 学習の70%は、「実際の仕事経験(Experiential learning)」によって起こる
  2. 学習の20%は、「他者との社会的なかかわり(Social learning)」によって起こる
  3. 学習の10%は、「公的な学習機会(Formal learning)」によって起こる

という学習機会の割合を明らかにしたものです。研修など「公的な学習機会」よりも、「実際の仕事経験」の中で学ぶことが7倍多いわけです。

したがって、学習デザインに組み込むべきは、研修の設計だけでは不十分で、いかに「他者との社会的なかかわり」を生み出し、「実際の仕事経験」と連動するかが重要だということですね。

カークパトリック・モデルとは

アメリカの経営学者カークパトリック博士が1959年に考案した、研修の効果測定に関するモデルとして一番有名なものです。

ただ、現在は変化の激しいVUCAな世の中に合わせるべく、もっと動的な新モデル「The New world Kirkpatrick model」にパワーアップしているようです。

※太字部分が足された新モデル部分

  1. レベル1(反応):「参加者の満足度」+「エンゲージメント(心からの関与)」「参加者にとっての妥当性」
  2. レベル2(学習):「知識・スキル・態度の習得度」+「自信」「コミットメント」
  3. レベル3(行動):参加者の「行動変容」+「行動を促進するシステム(観察・調整・勇気付け)」
  4. レベル4(成果):「期待成果」+「先行指標」 

重要なフィードバックのコツ

上記70:20:10フレームワークの中の「他者との社会的なかかわり(Social learning)」において重要なことも、リーダーシップ論の観点から述べられていたようです。

それは、2万人以上に上るリーダー対象の調査によると、効果的なフィードバックは、「リーダーシップの効果性」「従業員のエンゲージメント」「リテンション(定着)」のすべてに有効な影響を及ぼすというもの。

また、その際に重要なのは「ポジティブなフィードバックは、相手の『能力』ではなく『努力』に対して行え」ということなんだそうです。

これは、能力や才能を褒めることで、固定化されたマインドセットが育まれてしまい、それは変化に対して「失敗したくない」「悪い評価を得たくない」などの抵抗としての反応を引き起こしてしまうからという理由でした。なるほどー。

まとめ

他にも、「eラーニングは2分しか持たない」という研究結果が発表されていたり、学習効果を維持するための学習デザインのコツが示されたりしていて、色んな学びがありました。

70:20:10フレームワークを意識した学習デザインや、新カークパトリック・モデルの考え方など、今の仕事ですぐにでも活用していきたい内容があったので、しっかり考えていきたいと思いました。

2015年のATDは5月17日〜20日まで開催されるみたいなので、また2015年に発表される人材開発界隈の流れは、しっかり把握しておきたいと思います。

Mini1427534864

公式サイト:ATD 2015 (formerly ASTD)

では、また!

スポンサーリンク