秋山進という方の著書『「一体感」が会社を潰す』という本が学びがあったので紹介しようと思います。本のサブタイトルは「異質と一流を排除する子ども病の正体」ということで、大人の組織とコドモの組織というメタファーで持論を述べられてました。こんにちは、164(@next164)です。
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「一体感」が会社を潰す
著者の秋山進氏は、京大卒で、リクルートから独立し、現在はプリンシプル・コンサルティング・グループという会社を経営するコンサルタントみたいです。
戦後、日本企業の成長を支えてきた「一体感」が、社会経済の発展・変化やキャリアに関わる問題から、現在・未来においては重篤な病気であると論じています。
例えば、現在はグローバル化や社会環境の変化により、社員の「多様性」が求められている時代であるにも関わらず、ひと昔前までの競争力の源泉であった、社員の「同質性」を大切にしていた組織から進化できていない、ということなどです。
詳細は本を読んでもらえれば分かるのですが、特に学びになったポイントをいくつかまとめておきたいと思います。自分の頭の整理のためにも。
コドモの組織と大人の組織
コドモの組織と大人の組織には様々な違いがあると著者は言います。簡潔に一覧表にまとまっていたので、それをもとに特徴を比較したいと思います。
※ 「○○(コドモの組織の特徴) → ●●(大人の組織の特徴)」というフォーマットで記載します。
組織の競争力の源泉
- 標準化力 → 専門技術力
- 同質性 → 異質性
高度経済成長期には、多くの人員を標準化し大量生産の体制を整えることが、組織の競争力につながっていたが、現在は違うということですね。差別化しないと生き残れない状況では、専門性と異質性を持たねばならぬということだと思われます。
組織を結びつける役割
- 一体感、仲間意識 → ビジョン、目的、理念
一体感と仲間意識は、僕も今の会社でも大事にしていて、組織成長にとっても重要な要素だと思ってましたけど、著者曰く違うらしいです。でもよくよく考えると、ただの仲間意識ではなく、ビジョンや理念に紐付いた一体感・仲間意識でないとなあなあなダメ組織になっちゃうよな、と思い直したりしました。
個人と組織の関係
- 所属 → 参加
これは共感。会社・組織がなにかやってくれるというスタンスだと、ダメですね。
個人間の関係
- 摩擦回避 → 摩擦が発展の糧
これは頭では分かっていても、なかなか実行できないムズカシイことだと思います。でもそれは何らかのしがらみや遠慮にまみれているだけで出来てないことがほとんどだとも思うので、冷静に本質的にはどう行動するのが一番いいのか、高い視点で考えて実行するべきなんだろうなと。
これは課題だなー。人間関係が一番の阻害原因なんだろうけど、ベテランになればなるほど、よくも悪くも人間関係が出来上がっていきますもんね・・・。
個人のモチベーション
- 社内的な地位 → 社会での地位
- 金銭報酬 → 仕事のやりがい
- 仲間ウチの楽しさ → 技術の向上、お客様の喜ぶ顔
まぁ、これはなんとなく分かりますね。
判断基準
- ルール、マニュアル → ビジョン、プリンシプル(原理原則)
大前提、基礎としてのルール、マニュアルありきの、ビジョンやプリンシプルに従った判断が大事だと思いますけどね。
マネージャーの仕事・個人との関係
- 自社のやり方の実践 → ビジョンの設定、戦略の立案
- 調整、根回し → 摩擦の建設的活用、決断
- 管理監督 → 専門性の発揮と統合
調整、根回しは説明責任って意味ではそのタイミングの問題の話なので、必要だとは思いますし、意味のない摩擦を生まないためにも適切に行う必要はあるかなと思いますけど、あとは納得です。今までのやり方を実践するだけでなく、カイゼンカイゼン。
自立と自律のマトリクス
もう一つ学んだポイントとしては、コドモの組織から大人の組織になるために必要な3つの要素の1つ目である、「自立と自律」。これが分かりやすいマトリクスで説明されていたので学びになりました。
ちなみに、3つの要素とは、1.個人の自立と自律、2.目的合理的な思考行動パターン、3.マネジメントのプロ化、の3つです。
これが「自立」と「自律」の3×3のマトリクスです。
自立(縦軸)を、丁稚、一人前、一流の3段階に、そして、自律(横軸)を、他律、自律、統合律の3段階に分けてあります。
基本的には「丁稚×他律」の段階から社会人としてスタートし、最終的に「一流×統合律」であるプロフェッショナルか、「一流(の上)×自律」の超一流を目指すべし、というのが著者の主張でした。
ちなみに、統合律というのは、他者を認め、他者のやり方を許容しつつ、自分のやり方や考え方との間で高度な融合をはかる段階で、つまり、自分を活かしながら、全体の最適化をはかる、滅私奉公ではない「活私奉公」の段階ということのようです。
個人的に面白かったのは2つの厚いカベの存在
まず、他律の一人前と一流の間の厚いカベ。これは、他律(他者の言うとおりにしているだけ)では、一流になれないので、自律してから一流を目指すということを示しています。確かに、世の中の一流と呼ばれる人たちは、皆自律している人たちだよなーと思ったので納得感が高かったです。
そしてもうひとつ、統合律の一人前と一流の間の厚いカベ。この原因として著者が述べているのは、自律の経験値の問題でした。
高度経済成長期においては、新入社員がどんどん入ってきて個々の技術を磨くよりも全体の底上げに優先順位が置かれ、かつ、それなりでも組織としての仕事が回ってしまうという社会環境があったために、十分な自律の時期(自分の技術を高め、自分の考えを深める時期)が無いままにどんどん管理職になり、統合律の段階の仕事を求められることが多くなってしまったようです。つまり、自分の考えがない(もしくは弱い)管理職が増えるということですね。
このことにより、マトリクスの「自律×一流」を目指そうとする社員がいると、わがままで目障りなやつに見えてしまったり、変人扱いをして潰してしまうということが起こり、結果、現在の社会環境に置いて伸び悩む組織が生まれてしまっているということです。
今までの日本の組織の歴史から仮説を立てて論じているので、なかなか納得感がありました。自分が今所属(いや、著者に合わせると参加ですねw)している組織の現状を観直してみるきっかけになったと思います。
その他キーフレーズ
最後にいくつか、その他の学びになってメモを取っておいたフレーズを書いておきます。
- ルールに縛られて例外を許さないから、裏ワザや不正が生まれる。
- リーダーはビジョンだけ語れてもだめ。実行不可能な目標にならないよう戦略や戦術も語れ。
- お客さんと善くつながる力(営業力)は大事。
- 摩擦を覚悟しつつも、目的と制約条件は与え、評価基準の優先順位はリーダーが決める。※プリンシプルとしての基本原則だけは守らせる。
では、また!